FT-107S

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FT-107シリーズは1979年6月に発売されました。FT-107(無印)は100W、FT-107Sは10W、FT-107M/SMは12チャンネルの周波数メモリー機能が付いています。FT-107シリーズで最も特徴的なのはそのパネルの色で、当時も今も珍しい「白」です(グレーのバージョンもあるそうです)。発売当時にアマチュア無線をやっていた方は、その型番は憶えていなくても、この白いマスクに必ず憶えがあると思います。それくらい印象的でした。


その頃のヤエスのラインナップを振り返ってみると、FT-101の型番は引き継いでいるもののそれまでのFT-101とは全く異なるFT-101Z/ZSが78年12月に、FT-101ZSD/ZDが79年の2月に発売されています。また2年前の77年2月には初めてのオールソリッドステートのFT-301シリーズが、12月には最高機種のFT-901シリーズが発売されています。

107シリーズの発売価格は無印が189,000円、10WのSタイプが169,000円と、普及タイプの101Zと高級機種の901の中間あたりに設定されています。ただ101Zも901もいずれも終段に真空管を用いているので、オール半導体の107はやや異なる位置付けだったのでしょう。

一方同じ頃のTRIOを見てみると、TS-520シリーズの最終バージョンであるTS-520S/Vが77年6月に、高級機種に分類されるオールソリッドステートのTS-180X/V/Sが79年8月に発売されています。価格的にも時期的にもFT-107のライバルはこのTS-180と見なせると思います。


原振はVFOですが、周波数表示はデジタルです。VFOの周波数を周波数カウンターで測定して送受信周波数に換算しています。写真で見ると表示色はアンバーに見えますが、実際はもう少し赤みがかったオレンジ色です。ダイヤルは101のようなネトッとした感じはなく、比較的するするとまわりますが、TS-520のようにシャーという感じで回ることはありません。


モードはLSB/USB/CW-W/CW-N/FSK/AMとなっています。狭帯域のCWフィルターをいれない限りCW-WとCW-Nはいっしょです。またヤエスらしくAMモードがちゃんとついています。マイクプラグは8pinです。また送受信時の調整箇所はなく、同調操作は不要です。FT-301シリーズなどはプリセレクタと呼ばれる初段の同調が必要でしたが107シリーズではなくなっています。


またいろいろと付属回路がついています。主要な機能を挙げると、
  1. スピーチプロセッサー〜RFのクリッパータイプでコンプレッション量の効き具合を調節することができます
  2. ノイズブランカ〜同様に効き具合を調節できます
  3. APF(Audio Peak Filter)〜AF段のピークフィルターです
  4. Notch〜同じくAF段のノッチフィルターです。あまり効きません。
  5. IF WIDTH〜IFのフィルターの通過帯域を上下にずらすことで混信除去ができます
そのほかに、TRIOのようにAGCのSlow/Fast/OFFの切替えができます。この機能はTS-520などにはあるのですが、ヤエスのリグではFT-101シリーズにはありません。

この107シリーズの特徴としてDMS(デジタル・メモリ・シフト)があります。これは周波数メモリ機能で、12種類の周波数を記憶することができます。局部発振器がPLLシンセサイザンになってしまった今日では珍しくもなんともありませんが、原振がVFOだったこの時代には画期的な機能だったことでしょう。

回路構成はプリミックスタイプのシングルコンバージョン方式です。当時、FT-901はVFOをリファレンスとしてPLLをかけたシングルコンバージョン、FT-101Zはプリミックスのシングルコンバージョンでしたので、局発の作り方はFT-101Zを踏襲していることになります。

受信
RF信号はプリミックス方式によって生成されたローカル信号と混合され8.9875MHzに変換されます。この中間周波信号はSSBフィルター(XF-8.9HS)またはCWフィルター(XF-8.9HC〜オプション)を通過します。この信号はいったん19.7475MHzの信号と混合されて10.76MHzへ周波数変換され2.8kHz幅のフィルタ(XF-10HW)を通ります。これは帯域幅可変のためです。その後再度19.7475MHzと混合されもとの8.9875MHzに戻されます。その後検波されてAF信号へ変換され出力されます。
送信
送信は非常に単純でAF信号をDBMで8.9875MHzにDSB変調した後SSBフィルタ(XF-8.9HS)を通してSSBにした後ローカル信号と混合されRF信号となります。プロセッサON時はIF段でコンプレッション後不要輻射を防ぐSSBフィルタ(XF-8.9HP)が1段入ったあとRF信号へ変換されます。
ローカル
VFOは5.0〜5.5MHzの周波数を発振します。この信号は水晶発振回路で生成されるバンドごとの信号と混合され所望のローカル信号が生成されます。

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