TS520の分解

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以前入手したTS-520Xの不動品を分解しました。

ここで紹介したようにVFOだけは分解して動作を確認しましたが、もう少し分解していろいろ調べてみました。

TS-520は各機能ブロックがユニット(基板)ごとに分かれています。その中のキャリアユニット、ジェネレータユニット、AFユニットを外しました。それぞれのユニットを利用して自作のトランシーバーを構成するという観点で以下に記します。

  1. キャリアユニット


    キャリアユニットはCW,LSB,USBに応じた3395MHz(or±1.5KHz)の信号を発振する水晶発振器です。電源電圧は8.3V、CW/LSB/USBに対応した端子に9Vの電圧をかけると各々の周波数で発振します。その他のピンはオープンです。発振した信号は次のジェネレータユニットへ供給されます。このユニットにはしたがって3つの水晶が載っています。電源電圧8.3Vは電圧逆流防止のダイオードが挟まっているので9Vから0.7V程度落ちていますが、おそらく9Vでも普通に動作すると思います。これはそのまま使えそうです。


    キャリアユニット出力(周波数)

    キャリアユニット出力(時間)

    このようにキャリアユニット出力は無負荷で約1.2Vppとなっており、高調波は-40dBc以下です。

  2. ジェネレータユニット


    このユニットは送信系では、

    受信系では、

    このユニットはキャリアレベル調整用のVRが繋がります。また送信のALC制御用の入力端子があります。このALC入力をどのように処置すればよいのか、ちょっとわかりません。電源は16Vが供給されます。

    ちょっとややこしいので整理すると、

    端子名I/O説明
    GENO変調器出力(正確には変調器後段バッファアンプ出力)
    BMI変調器入力。CW時はCW端子に接続(キャリアレベルに対応したDCが出てくる)、SSB時はMAO(マイクアンプ出力に接続)
    ALGIALC信号入力(変調器バッファアンプ利得制御)
    RD1:RD2I復調器入力(差動)
    DETO復調器出力
    MICIマイク
    MV1-MV2 マイクゲインVR(10kΩ[A])。MV1はVR片側、MV2はVR中点。VR反対側はグランド
    MAOOマイクアンプ出力
    CARIキャリア入力
    CVIキャリアレベル調整VR(10kΩ[B])。片側は9V、もう方側はグランド。つまりこの端子に掛ける最大9VのDC電圧がCWのキャリアレベルになる
    CWOキャリアレベル入力にローパスフィルタがかかったものがここから出力される
    RLQ,RLRI外で結線されている。送受切替え信号。リレーへ接続されている。送信時GND受信時オープン?

    ジェネレータユニットの各部の電圧を実働TS-520Xで実測したところ次のようでした。

    端子名実測値
    CV最大9V
    CW最大0.5V(CVの約1/10)
    16(電源)15V
    ALG150mV(CW/TUNE時、RX/TX共)、0V(SSB)
    RLQ/RLR0V(受信時)、15V(送信時)

    ALC制御電圧(ALG)は少なくともCWの時はキャリアレベルにかかわらず一定です。SSBの方は低周波発振器かなんかで信号を突っ込まないと調べられません。

  3. AFユニット


    バランストデモジュレータからの受信信号を増幅してスピーカーに出力するAFアンプと、CWのサイドトーン発生用の低周波発振器が載っています。仕組みはたいして難しくないのですが、受信信号とCW送信時のサイドトーン出力の切り替えの制御が少しメンドウです。あとこのAFユニットからVOX(SSBの音声またはCWのトーン)の制御信号が出力されています。AFアンプの利得を制御するVRが外に必要です。電源は+14Vとなっていて常時供給されています。ます。AFアンプとしてだけ使うのであれば簡単ですが、CWのサイドトーン出力を考えると少々めんどくさそうです。

    このユニットは受信時は通常動作、CW送信時はサイドトーンを出力、SSB送信時はMUTEと3種類の動作があるため動作が複雑なんだと思います。

    端子名I/O説明
    DETI復調器からの信号入力
    AV1-AV2 AFゲイン(10kΩ[A])。AV1がVR片側AV2がVR中点。VR反対側はグランド
    SPOスピーカーへ
    STSI電鍵がなければGNDへ。ささっていればオープン
    STEICWモード時はグランドへ。他のモードではオープン
    STOOサイドトーン出力(VOXユニットへ)
    KEYIキー入力。SSB時はグランドと電鍵の+側(電鍵はショートになる)。CW時は電鍵+側のみへ
    RLI送受切替え信号
    STBI平滑ユニットのSTBへ。何に使うか、入出力か不明
    VFBI外部VFO接続ポジション時以外はオープン

    AFユニットの動作時の各部電圧実測値は以下のとおりでした。

    端子名実測値
    VFB0V(FUNCTIONポジションにかかわらず)
    9(電源)9V
    14(電源)15V
    RL0V(受信時)、15V(送信時)
    STBAC250V

    最後のSTBだけよくわかりません。AFユニットのサイドトーン発生部に印加されているようですが、なんでそんな高い電圧が必要なのかわかりません。マイナス電源発生用かなぁ???

  4. キャリアユニットとジェネレータユニットの接続

    上のキャリアユニットからCW送信時の3395kHzの信号を出力し、その信号をジェネレータユニットのキャリア入力端子に接続して、RLR/Qを15Vに吊って送信状態にして、平衡変調器のバッファアンプ出力を観測しました。キャリアレベルを決めるCV端子の電圧を0V(最小)と8V(最大)にしてみたのが下の図です。

    ジェネレータユニット出力(CV=0V)

    ジェネレータユニット出力(CV=8V)

    図のように、CV=0Vのとき、変調器出力レベルは約-40dBV(=10mV)に対してCV=8Vのときは-12dBV(251mV)となっています。この値はゼロピーク値なので。

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