FT-101ESその後

Last Modified at

さて、ここここで八重洲のFT-101ESを紹介しましたが、その後押入れの中にしまわれて、あまり登場の機会がありませんでした。昨年(2007年)の暮れごろに、思い出したようにFT-101ESを持ち出して、7MHzのCWで交信しようとしたところ、CQを連発している局をいくら呼んでも応答がありません。これはどうしたことかと思いましたが、どうも送受の周波数がずれているようです。クラリファイヤで受信周波数を少し下げたところで相手の信号に合わせると、応答があります。

そのうち調整しようと思ってしばらく経ちましたが、時間を見つけて調整してみました。新・FT-101メンテナンスガイドを見ると、以下のようなことがわかりました。

FT-101のクラリファイアは、受信時にバリキャップの電圧を変えています。クラリファイアはプッシュスイッチでON/OFFするようになっていますが、OFF時にVFOの発振周波数が送信と一致するように調整しなければなりません。これはパネル下部のフロント面から見て右の手前の部分にVR4という半固定抵抗が宙ぶらりんについています。このVRを調節します。これがずれると送受の周波数がずれるというわけです。VFOの周波数を周波数カウンタで観測したところ、送信時に多少(200Hz程度)周波数が上がることが確認できました。この程度のズレがCWで呼んだときに応答が無い、つまり相手が狭帯域のCWフィルタを使っているとして、その帯域外にはみ出してしまうほどのズレになるとは思えませんが、とりあえず送受でVFOの周波数が変わらないようにVR4を調整しました。VR4は下の写真の左上にあります。本体のカバーを外さないとちょっとドライバーが届かない、中途半端な位置にあります。


SSBで他の無線機と鳴き合わせ(相手の無線機から送信した信号が正常に受信できる状態にして、FT-101ESから送信して相手側の無線機で受信する)したところ、周波数ズレは全く感じられませんでした。

ただ、CWにすると矢張りずれているような気がします。CWの場合、もともと受信周波数と送信周波数が700Hz程度ずれるものなのでよく考えないとわかりづらいのですが、FT-101の場合、こうなっています。

変調ユニット(PB-1184)にはLSB用、USB用、CW/AM用の3つの水晶と発振回路が載っています。LSB送受信時は3181.5kHz、USB送受信時およびCW受信時には3178.5kHz、CW/AM送信時には3179.3kHzが発振する筈です。そのうちLSB用とUSB用の水晶発振回路の出力はIFユニット(PB-1183)へ出力されます。CW/AM送信用の発振回路の出力はキャリア調整用ボリュームへ行きます。


上の写真に3つ水晶と手前に調整用のトリマコンデンサが並んでいますが、右からUSB用、LSB用、CW/AM用となっています。LSB用の水晶とUSB用の水晶の発振回路の出力は、一番左側にあるIFユニット(PB-1183)の5番ピンに当たれば周波数が観測でき、周波数カウンターで周波数を見ながらトリマを調節してLSB、USBがそれぞれ丁度3181.5kHz、3178.5kHzになるように調整しました。調整前はUSB用は殆どずれていませんでしたが、LSB用は200Hzほど上にずれていました。

次に問題のCW/AM送信用の発振回路出力ですが、こちらはキャリア調整用ボリュームの端子をワニ口で掴んで周波数を測ってみました。すると、ほぼ3.1800kHzとなっています。本来であれば3179.3kHzなので、700Hzほど上へずれていることになります。ところがこの周波数が、調整用のトリマーを回しても下へ入ってくれません。トリマを一周回すと、3.2800〜3.2805kHzの範囲で動きます。つまり、本来発振しなければならない周波数へ調整できないということがわかりました。

それではなぜ本来発振しなければならない周波数へ調整できないのでしょうか?理由としてはまずは基板に供給されている電源電圧が疑われます。これを調べるには、延長基板か何かを入手しないと直接測れないので厄介そうです。

その後調査を進めた結果、このキャリア発振ユニットを一度外して、もう一度装着すると本来の3.1793MHzで発振していることがわかりました。ただ、MODEをMOXにして送信状態にして発振周波数をクラリファイアのVRのところで測っていると、時々発振が止まっていたり、3.2800MHzになったりしてもう一つ不安定です。よくわかりませんが、電源電圧がうまくユニットに供給されていないような気がします。根本解決はそういうわけでできていません。

その後さらに調査を進めた結果、よくわかっていませんが、電源系は問題なさそうな感触です。キャリア発振ユニットの4番ピンには受信時に13.5Vの電圧がきて、TUNE/CW/AMの送信時のみここの電圧が0Vになります。このピンは1kΩの抵抗を介して3.1793MHzの発振回路のエミッタにつながっています。つまりここの電圧が0Vになったときだけ、この発振回路が動作するようになっています。

ところが、ここの電圧が0Vになっているのに、発振回路の出力のコレクタ側のコンデンサには出力が見られません。なぜか、次段のバッファ回路の入り口で観測すると3.1800MHzの信号が見られます。なぜ発振回路が動作していないときに、バッファに3.1800MHzが発生するのかはわかりません。この出所不明の3.18MHzの信号がキャリアボリュームへ来ています。この3.18MHzのなぞのキャリアはオシロで見るとずいぶん歪んで見えます。

そこで、発振回路のトランジスタ(2SC372Y)を疑い、たまたま手持ちに合った同じトランジスタに変更しました。このトランジスタはテスタのhfe計では150を示します。外したトランジスタはhfeは54と低いものの、壊れている感じではありませんでした。で、交換後再度試してみると、、、やっぱりダメです。発振回路の出口で信号は確認できず、バッファからは3.1800MHzが出てきます。というわけで、おそらく水晶振動子自身が逝かれてしまっているようです。


(2008-2-17追記)
上のほうで「発振回路の出力が確認できない」というのは間違いで、発振回路の出口に直接周波数カウンタやオシロを当てると入力容量が大きすぎて発振が止まるようです。小さいコンデンサ(数pF)を介して測定するとちゃんと3.1800MHzが観測されます。というわけで発振回路が発振していないというわけではありませんでした。しかし、発振周波数が700Hz上にずれる、なんて異常があるんでしょうか?一応半田ごてでこの水晶発振回路周りのハンダを一旦溶かしてみたりしましたがダメです。DC的には2SC372Yのコレクタには6V、エミッタは0.4V、ベースは1Vとほかの発振回路と比べてもほぼ同電位なので問題なさそうです。あとはコンデンサの容量抜けと水晶発振子自体しか疑うべきものがありません。やはり水晶振動子自身の異常でしょうか。

(2008-2-23追記)
そのあとオークションでキャリア発振ユニットだけを2,500円で落札しました。入手したキャリアユニットはPB-1078Aというもので、FT-101無印用です(FT-101ES用はPB-1184Aです)。とりあえずこの基板を確認したところ、CW送信時の水晶の発振周波数は3179.1kHz程度と正常でした。


そのあと、このPB-1078AのCW送信用の水晶を外して、もともとのPB-1184Aの水晶と交換したところ、発振周波数が3179.3kHzにつまり正常になりました。水晶振動子がやっぱりおかしかったようです。


HOME INDEX BACK FORWARD
7m1kng@jarl.com